Webスペースの無駄使いのその2

色でいうならば灰色

1518の青春を君も見ろ!

突然だが、1518(イチゴーイチハチ)というマンガを知っているだろうか? 

この傑作青春マンガ、面白いのだが地に足ついた真面目な生徒会活動という舞台もあってどうにもこうにも地味であり、面白さが伝わりにくいという欠点を抱えている。
そのため、まずはこの作品がどう面白いのか、少しばかり考え、語ってみようと思う。

・イタリアから日本どころではない距離を経て

1518を語る上でまずどうしても避けられないのが、
作者の前作であるガンスリンガーガールの存在だろう。

ガンスリンガーガールはキャッチコピーからし
少女に与えられたのは、大きな銃と小さな幸せ」という直球のエモさであり、
その内容も
『成長を止めて身体能力を向上させた記憶も曖昧な少女たちが対テロの秘密工作員として顔のいい大人になりきれない面倒くさい男性とペアを組んで現代イタリアでドッカンドッカン格闘とか銃撃戦とかする』
という高カロリーなケレン味の塊のごときものだったのに対し、
1518は『どこにでもいそうな、いくらかの挫折を経た少年少女の地に足ついた生徒会の物語』という舞台設定であり、
ハッキリ言ってしまえばケレン味が薄くフックが非常に弱い。
ということで、ここを踏まえつつ魅力を紐解いていこう。

・どこにでもある日常の味

個人的に1518において最も重要なテーマは、
日常を楽しむこと』だと思っている。
もちろんそこを語る上での作品の根底こそがボーイミーツガールであり、
話そのものも
怪我で野球を諦め、未練を抱え無気力な高校生活を送ろうという少年、烏谷公志朗
特に目標なく高校生活に入り、そこで憧れだった烏谷と再開を果たした少女、丸山幸
という、高校生活で行き場を見失っている二人が、
出会いと生徒会の活動の中で新たな自分を見つけていくという筋なのだが、
そこで彼らに起こる出来事は、実際のところ、そう大したものではない。
どこにでもある、とまで言ってしまえば言い過ぎだが、
この世界のどこかで起こっていることの範疇を出ないだろう。
そんな、なんでもないような世界で、彼らはできることを見つけていく。
その発見の輝きの描き方がべらぼうに上手いのである。
彼らが見た輝きを、読者にも同じように見せるのだ。
それは物語そのものであったり、
各キャラのセリフの流れであったり、
コマの捉え方であったり……、
それをキャラが感じるように、読者にも感じさせるのである。

・バーサス・アンダースロー

例えば最初のサプライズともいえる第2話の会長のアンダースロー
そこに至るまでのそれぞれの会話や反応から、
会長が野球をやっていたのは丸ちゃんとの会話で示唆されつつも
その実態は掴めないし、
丸ちゃん以外の役員はそのことさえも知らない。
ザキさんとコーシローの会話「武士の情けで(ry」が一番わかり易いだろう。
そしてその流れで大きくコマを使ってからの、あのアンダースロー
そこでコーシローやザキさんと同じように、読者も度肝を抜かれるのである。
なにが起こったかわからないまま、コーシローと同じ視点で会長を見る。
こういった流れを積み重ねることで、それぞれの出来事が些細なことでも、
とても強く印象に残るのである。

・君にも見える青春の輝き

そしてこの作品は、そんな彼らの感じたことを読者も同じように感じるという効果が
彼らの関係の変化や心境にまでおよんでからが本番なのだ。
喜び、悲しみ、恋をして、そこに戸惑う
彼らという存在を知ったとき、その心の動きもまた、
同じように読者の心に響かせてくるのである。
そこがまあ、スロースタートたる所以でもあるのだが。
とかくまあ、説明しても説明しても地味になってしまう1518ではあるが、
極上の青春を『見る』事ができるのは間違いなく保証する。

だからみんなも読もう!

 

1518! イチゴーイチハチ! (6) (ビッグコミックス)

1518! イチゴーイチハチ! (6) (ビッグコミックス)