Webスペースの無駄使いのその2

色でいうならば灰色

ダンケルク

そんなわけで観てきました、ダンケルク
一般的な戦争映画としてみるとドンパチとか丁々発止なやり取りが多いわけでもないんで、
そこまで派手さがあるわけではないんですが、中々に凄い映画でしたよ、これは。
以下ネタバレ的な
何が凄いって、徹底してドイツ兵を描かないんですよ。出さないんですよ。
出てくるのは空戦パートのメッサーシュミット他数機の航空機だけ。
あとはラストのスピットファイア着陸後の捕虜を捉えに来たシーン。
冒頭の機銃掃射シーンでも、後半で商船が撃たれるシーンでも、ドイツ兵の姿は一切映らない。
だからこそそこに敵方の人間味はなく、物事はただイギリス側の人々の中のみで進んでいくわけで……。
いや、ナチスドイツといったら本来はまさに戦争映画の華じゃないですか。
しかし、この映画において、その存在は必要ないと判断されたわけです。
それによってこの映画はまさに、ただドーバー海峡を渡り祖国へと帰還しようとする人をめぐる物語に収まっている。
それが凄い。
『戦争映画ではない』という監督のコメントもこのあたりについての考えがあるかもしれない。



で、それを踏まえてのもう一つのこの映画の印象として、
これは『誰も見たことのない光景』を映したものではなく、
あの時、誰かが見ていたかもしれない光景の再構築』なのだろう、と。
それは生き残った人々と、生き残れなかった人々のもの、両方。
そういう意味でも、戦争映画という枠から少し外れたものかもしれないし、
真っ当な戦争映画のようでもあると思いました。