Webスペースの無駄使いのその2

色でいうならば灰色

スローカーブを、もう一球

待ってなかった方もお待たせしました。ようやく最初の感想をば。

スローカーブを、もう一球 (角川文庫 (5962))

スローカーブを、もう一球 (角川文庫 (5962))

某実況掲示板で以前薦められていた、スポーツノンフィクション短編集。
構成としては、取材した選手達の言葉からその心情を汲み取り、
それを文章に直して物語を描いていくという形になっており、
スポーツそのものにより深い視点を与えてくれるものになっている。
中でも印象的だったのは、
いくつかある、プロでないマイナースポーツに取り組む人々の話だ。
彼らは何を想い、それにどう取り組んでいくのか。
それは、スポーツの根源ともいえる部分であり、
スポーツをするということ自体について考えさせられる。
栄誉もなく、生活できるほど専念できるわけでもなく、
それでもただ、自分の限界に向き合っていく。
一番最後のに収録されている棒高跳びの選手の話が最も象徴的だろう。
その中でも、特に印象的な言葉を引用してみる。

しかし、彼はまだ跳び続けるつもりでいる。誰だって、自分の限界など認めたくはないのだ。
と同時に、行くべきところまでいってしまったときに立ち現われるむなしさという感情も、
彼の心の中にはある。

その後の彼の心情吐露と相成って、その一本の話だけでなく、この本全体、
ひいては、スポーツに挑むということ全てにいえる言葉なのかも知れない。
そしてこの本は、ヘミングウェイの短編小説から引用したという台詞で最後を締めている。
スポーツはすべてのことを、つまり、人生ってやつを教えてくれるんだ。