Webスペースの無駄使いのその2

色でいうならば灰色

アルベルト・シュペーア

とりあえずid:da_silvaさんのところの流れを受けて。
アルベルト・シュペーアという人物は、
変人狂人揃いのナチスドイツ官僚の中にあって、
同時代の人間からの人物評ではかなり高い評価を受けている。
マンシュタイン*1だったかグデーリアン*2だったか失念したが、
その回想録の中でも国防軍上層部とも折り合いを付けて
ナチス官僚の中で唯一の良識派と書かれていたし、
同じく元ネタは失念したが、空軍のアドルフ・ガーランドも、
シュペーアに対して理解力のある人物との評価を与えている。
さらに、ヒトラーの秘書が書いた回想録*3でも、

実際、シュペーアは心から好感の持てる、楽しい人だった。

との評を受けている。
他の官僚は大抵、見栄っ張りの権力欲の強い人物との評価を受けており、
シュペーアがいかに彼らとは異なっているかがわかるだろう。
だがもちろん彼とて、聖人君主でもない、ただの人間である。
後世で書かれた彼に対する批評は
ユダヤ人や捕虜の虐殺に手を貸したかどうかに集中しているため、
先に結論ありきの評価になりがちなのであてにならないが、
同時代の人間で彼を強く批判している人物もいる。
スポーツカーで有名な、フェルディナント・ポルシェ博士と、
その息子フュリー・ポルシェである。
ポルシェ博士はヒトラーお気に入りの発明家であり、数多くの兵器の開発を任されたが、
その過程で、軍需相であり、
兵器製造の効率化を図ったシュペーアとの対立を生むことになった。
ポルシェ博士の考えた兵器はどれもこれも実に趣味的で実験的であり
効率化を図るシュペーアにとってポルシェ博士は、
ヒトラーの庇護の下で好き勝手に無駄な兵器を開発する目の上のこぶであった。
一方のポルシェ博士から見れば、新参者の若造であるシュペーアが、
少しヒトラーに気に入られたからといって調子に乗っていると映ったのである。
フュリーによって書かれたポルシェ博士の伝記*4では、
シュペーアはあの手この手で自分達の邪魔をする厄介者として書かれ、
他の人物のシュペーア評とは一線を駕したものとなっている。
この点から見ても、シュペーアという人物は、
人間関係調整は上手かったものの、
自らの敵に対してはやはり他の人間と同じく
辛辣な態度を取る、普通の人間であると言える。
そう考えると、シュペーアもまた、
ユダヤ人虐殺には積極的にせよ消極的にせよ推進の立場にあっただろうし、
自らの立場や命を危険に晒してまでそれを止めようとする勇気は
持ち合わせていなかっただろう。
そういった点で、やはり彼も、一介の凡人にしか過ぎないのである。